
A:「なぜもっとスピーディに伝えてくれなかったんですかねえ?」
B:「きちんとお伝えしたつもりですが」
A:「でも急ぐことはわかっていたはずじゃないの。熱意が足りないんじゃないの」
B:「そういわれても」
A:「ええ?そんなこともできないっていうわけね」
B:「そんなわけではないんですが」
A:「わかった。もう頼みません」
上司と部下、同僚同士、取引先や顧客との間で、こういう会話が繰り返されていないでしょうか。これでは、せっかくお互いに会話を交わしながら、なんの気なしの粗雑で至らない言葉が、相手の力を奪うために使われてしまっています。
Aさんも、Bさんも、この会話の後から力がわいてくるはずがありません。お互いにもっと相手を力づけたり、思いやる気持ちはないのでしょうか。
Aさんは、きちんと連絡や報告をしたでしょうか。言葉足らずで終わっていなかったでしょうか。Aさんからこういうことを言われる筋合いはないと思うBさんも、Aさんに対する接し方、態度に落ち度はなかったでしょうか。Aさんとのミゾを深めてしまった原因はないでしょうか。
お互いに相手に対する自分の行いを点検してみましょう。いずれにしても、これらの言葉が交わされる前後から察せられるのは、両者のコミュニケーション不足に違いありません。
オギャーと生まれてから今の今まで、私たちはあらゆるコミュニケーションをしながら生きています。いわば、だれも自分の年齢の分、コミュニケーションの経験者のはずです。それだけの時間を使いながら、コミュニケーションにたくさんの人が不具合や問題を抱えてしまっています。
「会話が空回りする」「相手とスムーズな交流が図れない」「人から助けてもらえない」「人に物事を頼めない」「人間関係での悩みが多い」「交渉がいつもうまくいかない」「効果的に自分の気持ちを伝えることができない」……。私たちの周囲はコミュニケーション不足で溢れかえっています。
コミュニケーションがうまく機能していれば、もっと物事はスムーズにいくのにと思ったことはありませんか。コミュニケーションには、相手を力づけ、何かを新しく生み出し、お互いに変容していく楽しい可能性があるはずです。
コミュニケーションは、人が関わるあらゆる分野に応用がきくがゆえに、やはり深いセンスをつかむことが大切です。また熱意が必要です。ただ小手先のテクニックはすぐに機能しなくなりますが、そこを入り口にすることも決して悪くありません。
実際に簡単なものから使い始めて、そこから勘をつかんでいくことが大切です。この本を読んで何かを試してみるところからが前進の始まりです。自転車と一緒で少し転ぶことからセンスは上がっていきます。転んでもOKとして、ぜひとも始めて見てください。
PART1 自分から近づかなければ相手に熱意は伝わらない
PART2 枠にしばられている自分をガラッと変えてみる
PART3 話すよりも話してもらえる工夫をする
PART4 言いにくいことも伝えられるセンスをみがく
PART5 質問は相手の心を引きつけるようにする
PART6 お互いに力を引き出すように相手に伝える
1963年東京生まれ。千葉大学卒業。帝人(株)にてマーケティング企画・営業・システム開発などを手がける。同時に、最新のコミュニケーション学、心理学、能力開発のトレーニングに参加。1992年に独立。 世界都市博覧会、アフリカ日本協議会設立、同国際シンポジウムなどさまざまなプロジェクトを手がける。一方、企業や自治体、学校、病院、NGOに対し、コミュニケーションや能力開発、個人や組織のパラダイム・シフトに関するコンサルティング、研修、講演、執筆活動を行う。 現在、岸事務所代表、ビジネスコーチ。コミュニケーションテクノロジー研究所チーフ。市場価値測定研究所フェロー。