
強い社長がいま求められている。経営環境がかつてないスピードで変化する時代にあって、古い経営常識が役に立たなくなり、誰もが明確な方向性をもてなくなっている。そういう模索の時代には強いリーダーが求められるのである。
では、社長のほんとうの強さとはいったい何か。
強い社長というと、一般的には「おれについてこい」的な強力なリーダーシップを発揮して、しゃにむに進んでいくワンマンタイプを思い浮かべるかもしれない。
しかし一方では、IT企業やベンチャー企業の社長によくみられるように、若いセンスを発揮して、知的な形でものごとをやり遂げていく社長もいる。かつての創業者のようなギラギラしたエネルギーは感じさせないが、これも強い社長である。
また最近は、女性社長がいろいろ出てきて、男性的な意味での強さではないけれども、筋の通った考え方と行動力によって立派に事業を成し遂げている。
強さのタイプはいろいろだが、共通しているのは活力と知恵の両方を兼ね備えていることだ。活力やバイタリティだけでも、あるいは知識や知恵だけでも強い社長にはなれないのである。
掲げた目標に向かって、状況の変化に巧みに合わせながら、次々と現れる困難や障害を乗り越えてしゃにむにやりぬく。この知恵と活力のある社長がほんとうに強い社長である。つまり、経営に取り組む確固たる姿勢と、経営を具体的に動かしていくマネジメントスキルが調和してこそ、強い社長が実現するのである。
そして心しなければならないことは、経営に取り組む姿勢とマネジメントスキルの背景に、経営者としての品性が必要であるということだ。
先ごろ亡くなった経営学者ピーター・F・ドラッカー氏は、経営人の人間性や品性と誠実さについて、幾度となく次のように警告している。
「品性と誠実さだけでは、何の成果も上げることもできない。しかし、能力があっても品性と誠実さが欠けていれば、他の能力のすべてが台無しになる」
人間性や誠実さにかかわる欠陥は、仕事上の能力や強みの発揮に障害になるなるというだけではない。それらの欠陥があるとすれば、いかに能力がすぐれていても経営にあたる資格はないということである。
最近、ビジネス社会から一目置かれた経営者の不祥事が頻発しているが、社長の本当の強さとは何なのかを考えるまたとない教材になるはずである。
強い社長という言葉を使っているが、これは強いリーダーと言い換えてもよい。今後の方向を模索している社長や経営幹部の皆さんはもとより、ビジネスの第一線で活躍する皆さんの参考になれば幸いである。
1章
1 社長は「ケチ、せっかち、小心」であれ
2 強い社長は「ケチ」である
3 強い社長は「せっかち」である
4 強い社長は「小心」である
2章
1 「才あって徳なし」か「徳あって才なし」か
2 社長の社会技術(スキル1)
3 社長の職務遂行技術(スキル2)
4 社長の人間関係技術(スキル3)
5 社長の創造技術(スキル4)
6 社長の生存技術(スキル5)
3章
1 経営理念はどんどん変えてしまえ
2 経営計画を手かせ足かせにするな
3 権限は奪うものだと教えよ
4 責任は部下にとらせる
5 任せていいことといけないことがある
6 組織人は歯車である
7 大局だけでは現場は動かない
8 成果主義を堂々と貫け
9 会社は人間形成の教育機関ではない
10はじめから優秀な人材などいない
あとがき
松井経営人事研究所所長。日本大学法学部法律学科卒業。中堅・中小企業を中心に、新人事制度づくり、組織改革、経営人事刷新プロジェクト指導を行っている。「理念だけで経営人事は変わらない。仕組みだけで人は動かない」という考えを行動基準として、日本各地で経営指導、経営人事システムの構築、定着と経営実績向上を調和させることで、沈滞する企業を蘇生させる名手である。 『最強の経営コンサルタント 二宮金次郎の教え』『強い社長は「ケチ」で「せっかち」「小心」である』(かんき出版)、『人を動かす44の成功法則』(大和出版)、『「理論武装」して部下を使い切れ!』『会社を強くする50の定義』『人事・労務管理マニュアル』(すばる舎)など著書多数。