
集団のなかには、周囲から一目置かれる「デキる人」がいます。
デキる人は、生産性や創造性が高く、人望があり、さらに要領がよく、私生活においても充実した人生をおくっています。デキる人の周囲では、多くの人が、
「こんな人と一緒に働きたい」
と思っています。デキる人と一緒に働くことで、いろいろな経験ができ、自分の成長が実感できるからです。このように、デキる人は、周囲の人に良い影響を与え、組織を動かし、結果として大きな成果をもたらします。
周囲からデキる人と目されていると、組織を率いるリーダーに、自然に選ばれます。そのタイミングは、以前はだいたい50歳前後でした。しかし今では、40歳前後からリーダーとして活躍してもらいたいという動きが、すでに顕著になってきています。そうなるとリーダー候補者たちは、意識的にその活動スピードを加速させなければなりません。
なぜ、リーダーを10歳も若くする必要があるのでしょうか。次の3つがその背景です。
第一に、時代の変化のスピードが加速していることです。ドッグイヤーならぬマウスイヤー(ネズミが人間の18倍の速さで年をとることから、1年がかつての18倍のスピードで過ぎていくこと)と言われるようになり、その結果、事業変化のスピードに組織が遅れてはならない、という危機感が生まれています。リーダーは、日常のビジネスすべてを加速化していかねばなりません。これを誘導する「若さ」が必要なのです。
第二に、40歳代のCEOを置く、欧米の一流企業と伍していかねばならないことがあります。40歳代といえば、知力、気力、体力面で最も充実するときだからです。
第三に、リタイヤするまでに時間があるので、リスクをとれることが挙げられます。
そうはいうものの、たとえば60歳代の方がリーダーを勤める現状から、一気に若返りを図るのは大変なことです。そのため、各社では、後継者育成プログラム(通称サクセッションプログラム)を用意して、幹部候補の早期選抜と育成に力を入れています。
こうしたプログラムでは、リーダーに求められる経営管理能力や組織運営能力、マーケティング・センスを問い、実際の場面での意思決定、コミュニケーション力、影響力などを体験させることを柱に設計されています。つまり、リーダーとして目指すべき人材像に即した行動ができるかどうかを、座学と実学の両面から育成していきます。
しかし、この試みは、簡単ではありません。いくら企業側が選抜・育成の仕組みを用意したところで、当の本人が自らの能力を高める努力をしていなければ、40歳代のCEOになるなど望むべくもありません。
そのためにも39歳までに様々な課題に果敢にチャレンジし、自らの器を自分の力で大きくしておくべきです。そうしないと、余計な時間を10年以上も続けることになってしまいます。
ところで、抜擢されるということは、他の優秀な人たちを追い抜かすことになります。抜かれた人たちは当然、おもしろくありません。この状況を放置しておくと、組織内が不健全な状態になります。
抜擢されたリーダーは、自分に対して、ある意味反感を抱く人たちを巻き込んでいくという、実に苦しいプロセスに取り組まねばなりません。それに耐えうる自分の器を形成しておかないと、活躍する前に足元がおぼつかなくなります。
さて、非常に面白いことに、現在、組織内で真のリーダーとして活躍している方々には、業種・業界を問わず、同じような体験を持ち、共通する特徴的な強みがあります。それは挫折あり、修羅場ありで、みな、必ずしも順風満帆で進んできたわけではありません。しかし、そこから確実に学び、現在の自分を築かれたのです。
もし、あなたが今、厳しい状況に置かれているとしたら、それはあなたの活躍スピードを加速させるためのチャンスかもしれません。ピンチがチャンスなのですから……。
本書には、これまで私が出会ったり分析したりした、デキる人々の強みや行動特性、経験などをもとに、、「読者のみなさんが効果的・効率的に真のリーダーになる」ためのヒントをまとめました。
ここで紹介されているデキるリーダーの行動特性を参考にしてください。そして真似てみてください。知らず知らず、それがみなさんの行動になじみます。
そのうちに、みなさんの言動に周囲が影響を受け、組織が動き始めるはずです。
第一章 デキるリーダーに共通する10の強み
第二章 現役リーダーの経験に学ぶ
第三章 真のリーダーの仕事術
第四章 デキるリーダー候補が道を踏み外す原因
第五章 リーダーとして活躍し続けるために
第六章 後継者育成プログラムを活かす
第七章 10年後もリーダーとして活躍しているために
1962年東京生まれ。上智大学文学部卒業後、在オランダ日本大使館、株式会社京王プラザホテルを経て、1995年から全世界で14000人を擁する世界最大の組織・人事マネジメントコンサルティング会社、マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング株式会社(旧名ウイリアム・エム・マーサー)で活躍。 2000年38歳で同社日本法人社長に就任。2002年より同社ワールドワイド・パートナー。 組織に実行力をもたらすコンサルティング、次世代の経営者層の発掘と育成に精通する。現職の社長、コンサルタント、公的機関のアドバイザーなど多忙のなか、国内外で多くの講演をこなす。 毎週発行しているメールマガジン『柴田励司の人事の目』は刺激的な内容をわかりやすく伝えるとして、各方面で注目を集めている。 2005年3月現在、経済同友会、アメリカ商工会議所、長野県行政機構審議会などで7つの役職を担っている。 著書には『取締役イノベーション』(共著監修:東洋経済新報社)、『明日のリスクが見えていますか?』(共著:文芸社)他、組織・人事マネジメントに関する論文が多数ある。