
「生き残る会社とリーダー」の条件
バブル崩壊後の最もドラマチックな企業復活劇といえば、日産のCEO(最高経営責任者)カルロス・ゴーン氏による「ゴーン革命」を思い浮かべる人が多いことだろう。
ゴーン氏は資本提携した仏ルノー社から一九九九年に日産に入り、四カ月で経営再建策「日産リバイバルプラン」をまとめあげた。社員の意識改革、価値観の変革を徹底させるとともに、従業員のリストラや工場の閉鎖など、大規模なコスト削減を行って業績を見事に回復させた。その結果、二〇〇一年五月の決算では、前期六八四四億円もあった最終連結赤字を三三一一億円の黒字に転換し、まさに劇的なV字回復を実現した。
じつはその華々しい復活劇の陰で、もうひとつの日仏合弁の企業のドラマがあった。
国内で強力なブランド力を誇るニコンのメガネレンズ部門と、世界的メガネメーカー・仏エシロール社の日本法人は、不況の波の直撃を受けて業績不振に喘いでいた。両社はゴーン革命とほぼ同時期に合弁会社「ニコン・エシロール」を設立し、一年目で営業利益を黒字転換。二年目には最終利益も黒字となって株主に配当を出せるほどに回復し、さらに三年目には無借金経営達成という復活を成し遂げた。
計画の段階から合弁会社の立ち上げにかかわった私は、現在CEOとして同社の経営を任されている。いわば、「再生仕事人」として雇われたわけであるが、その意味では企業の規模こそ違え、私とゴーン氏は非常によく似た境遇にあったといえるかもしれない。
企業を再生させるポイントとしてコスト削減は、業績回復に欠かすことのできない特効薬であることに異論はない。もちろん私も合弁会社立ち上げのときには無駄な部分を見直し、徹底的なコスト削減策を打ち出した。
ただし、コスト削減は数ある「会社力」のなかのひとつに過ぎないといえる。後で詳しく解説するが、企業を再生させる「会社力」ともいえるポイントは、正確に言えば五〇〇項目にも及ぶのである。
じつは私が企業再生に携わったのは、ニコン・エシロールが初めてではない。具体的な社名はあとで紹介するが、直接経営陣に加わったり、アドバイザーとして外から経営にタッチした企業の総数は関連会社などを含めると約二四〇〇社にのぼる。業界業種は多種多様で、誰もが知る世界的大企業から独立系ベンチャーの中小企業まで、その規模もさまざまである。
規模の大小や業界業種を問わずにこれだけの数の企業を見てくると、否が応でもある事実に気づく。
生き残れる企業には、いつの時代にも利益を力強く生み出す「超・会社力」とも呼ぶべき総合的な力があり、その力をもった企業だけが、厳しい企業間競争や不況にも負けずに発展・継続していけるのだと。
この「超・会社力」というパワーは、漠然とした精神論ではなく、具体的な実務論でないと役に立たない。そこで「生き残る会社とリーダー」・「ダメになる会社とリーダー」それぞれの特徴を詳細にかつ、つぶさに比較・検討して、「生き残るためにはリーダーは何をすべきか」をまとめたのが本書である。
あなたのまわりの企業を見回してほしい。とくに大資本がバックについているわけでもなく、画期的な新商品があるわけでもない。それなのに、なぜか業績が好調だという会社はないだろうか。そんな会社には、必ずといっていいほど強力な「超・会社力」と呼べるパワーがある。逆に言えば、いくら外から良く見えたとしても、そのパワーのない企業はこれからの厳しい企業戦争を勝ち残ることはできず、いずれ淘汰される運命にある。
はたして、リーダーであるあなたやあなたの会社は生き残れるのか。もし業績が落ちこんでいるとしたら、再生の道はあるのか。この「超・会社力」を実行すれば、必ずあなたの会社も甦るだろう。
第1章 企業の本当の実力は「会社力」でわかる
1 再生できない会社にはワケがある
2 価格競争が企業の体質を変えた
3 V字回復に欠かせない五つの条件
4 二四〇〇社の企業再生から導き出された「超・会社力」とは?
第2章 経営の力
1 経営者の力とは?
2 社長が夢を語らない会社は経営の能力に欠ける
3 リーダーの「知的腕力」が組織を統一する
4 社長室に置かれた家具でわかる決断の速さ
5 即決できない社長や幹部は勝てない
6 会議でわかる、会社のほんとうの実力
7 企画書の枚数が多いほど赤字も膨らむ
第3章 組織の力
1 経営しやすい組織にする
2 社員をやる気にさせる力を手にする
3 部下を本気にさせる六つのシステム化
4 上手な部下の叱り方を知っておく
5 戦略とは「自社を有利にする計画実行力」のこと
6 業績不振はCPI問題解決法で乗り切れ
7 CPI問題解決法は、転職計画にも有効
8 ロジカルシンキングを助ける私の「おやっとノート」
9 競争力のある製品・サービスをつくる力を身につける
10 プロの営業頭脳集団が販売を強力に行う
11 営業マンが守るべき三つの約束
第4章 力強く利益を生み出すしくみ
1 赤字の会社には自然に赤字を生むシステムが根づいている
2 赤字を断ち切る「戦略経営会計」で企業体力を強化する
3 安易な安売り戦略は死を招く
4 「最小の投資で最大の効果を」は大間違い
5 上手にコストを削る二つの方法
6 商人の子供が企業体力を強くする!?
7 できる二代目社長の見分け方
第5章 生存の力
1 日本企業を追いつめる四つの敵
2 ツキを呼び込む力のある会社は強い
3 ビジネスでは「成功は成功のもと」が重要なキーワード
4 企業がスランプから脱出する方法
5 採用面接でわかるツキのある人材
6 牛丼対決から学ぶ不運を避け、被害を最小にする力
7 リスクオフセット(危険の相殺)を事業計画に盛り込め
8 トイレや目に見えないところが汚い会社は倒産の危険性が!
9 資金繰りに困った会社の見分け方
第6章 孫子の兵法の現代版「SWOT分析」で赤字が黒字になる
1 SWOT(スウォット)分析は経営戦略策定の第一歩
2 自社の強みと弱みを把握しろ
3 SWOT分析の効果を高める三つのポイント
4 ケーススタディ/ニコン・エシロールの場合
1939年千葉県生まれ。中央大学経済学部を卒業後、十條キンバリー、ゼネラルフーズ、ジョンソン等で、マーケティング、プロダクトマネジメントを担当。その後、ケロッグジャパン、バイエルジャパンなど外資系企業で経営幹部や代表取締役などの要職を歴任。 2000年、(株)ニコンとエシロール社の合弁会社(株)ニコン・エシロールの代表取締役。50億円の赤字をかかえていた同社を1年目で黒字へ、2年目で無借金経営に変貌させた経営手腕は高く評価されている。 これまでに2000社を超える企業の再生事業に参画し、とくに中間管理職である課長を中心に熱烈指導。「課長が元気な会社は赤字でも生き抜くことができる」ことを実感。その経験をもとに、現在は会社力研究所代表として、国際ビジネスコンサルタントとして活躍する一方、再生事業で培った「利益を生み出す組織、仕組みの作り方」を多くの企業に伝えている。また最近では赤字企業の質問にていねいに答える、企業からのいわゆる人生相談的な講演依頼が多い。 著書に『超・会社力』『仕事前の1分間であなたは変わる』『社長のノート』(以上、かんき出版)などがある。