
前作『論理力を鍛えるトレーニングブック』で、「論理思考は特別な能力ではない」と明したが、「論理的にわかりやすく、正確に自分の意思を伝える力」もまた特別な能力ではない。論理思考に基づき、手順を踏んで行うことと、途中で思考を停止しないという点さえ身につけば、論理的な説得は十分可能だ。
今回の「意思伝達編」は、論理力を一歩進めて、「自分の考えを論理的に構成し、それをどのように会話や文章で人に伝えるか」をテーマにしている。前作を読んでいなくてもわかる内容にしているが、前作を読んでおいたほうが、理解はより深まる。
自分が考えていることを論理的に構造化することができ、さらにそれを相手にきちんと伝えられるようになると、次第に「仕事がやりやすくなった」「人から信頼されるようになった」と感じるようになる。「最初は心配だったが、やらせてみたら思った以上にやってくれた」と上司に言われたり、「○○先輩についていけばだいじょうぶだと思った」と言われたりしたという話を、筆者が講師をしているグロービス・マネジメント・スクールの修了生からも聞くことが多い。
ビジネスでは、ただ自分がロジカルであるだけでは足りず、その論理を使って実際にビジネスを動かせて、はじめて価値がある。ロジカルでありさえすれば人に伝わるというわけではないが、人が動いてくれる論理構成の仕方というものは存在する。本書では、「実際に人とともに行動する」ための論理の組み方を学んでいくことにしよう。
プロローグ
●ロジックで意思伝達のパワーを上げよう
1.やりたいことをやるために、意思伝達力を鍛える
◎「これをやりたい!」という意思が出発点
◎人を動かすことで、やりたいことを実現する
2.「やりたいことができる」とはどういうことか?
◎たとえば都会と田舎、両方に暮らす
◎たとえば週休5日を実現する
◎不可能に思えることを現実のものにする
3.あなたの企画書が通らない理由
◎一番伝えたいことが伝わらない
◎メッセージを伝える勉強はしてこなかった
◎論理的にメッセージをつくる方法を学ぼう
4.「論理思考」を鍛えてはじめて意思伝達力が身につく
◎意思伝達力のさまざまな側面
◎自分の考えに自信がもてるようになる
5.この本の特徴と構成
◎GMSの講師経験をもとに書かれた
◎実際のビジネスパースンに回答してもらった
◎付箋を使って手を動かして学んでほしい
第1部 基礎編
論理思考で意思をつくり伝える
第1章●意思が伝わるメッセージはココが違う!
1.「イシュー」が特定されているか?
◎「イシュー」は「問題」や「課題」とは違う
◎イシューは疑問文の形をとる
◎イシューを維持する
2.「メインメッセージ」がはっきりしているか?
◎イシューに対する答えがメインメッセージ
◎メインメッセージが発見されるタイミング
3.理由が構造化されているか?
◎「キーライン」がメインメッセージを支える
◎キーラインは5個以内
◎論理はピラミッドストラクチャでまとめ上げる
4.ピラミッドから表現に展開されているか?
◎ピラミッドは表現の設計図
◎ピラミッドからはずれずに表現する
5.7割の時間と力を論理構築にあてよう
◎ピラミッド作成までに7割の時間を割く
◎表現は3割の時間で
◎情報収集と論理構築は同時に行う
6.文章表現がうまい必要はない
◎うまい文章を書こうとしない
◎「自分が考えてきた思考のプロセス」を書かない
◎文章力に頼らない
第2章●意思伝達力を生み出すステップ
step1 イシューに徹底的にこだわる
◎イシューの候補の違いを考える
◎イシューの意味を深める
◎イシューを決定する
◎イシューはひとつか?
◎言葉を定義しないで意味を考える
step2 ストラクチャを発見する方法
◎イシューが決まったら、メインメッセージを想定する
◎サブイシューを考える
◎イシューとメッセージ
◎サブイシューの発見が非常に重要
◎サブイシューは厳密にMECEにこだわらなくてよい
◎サブイシューを発見する3つの方法
step3 「So What?」で意味を抽出する
◎ストラクチャに合わせてパーツをグルーピングする
◎重要なパーツを漏らさない
◎So What?で意味を抽出する
step4 ピラミッドストラクチャを完成させる
◎So What?を数回繰り返す
◎さまざまな読み手の立場で眺めて反論を考える
◎反論に対する反論を考える
step5 表現に展開する
◎ピラミッドから文書に展開する
◎文書のボリュームはどの程度が適当?
◎プレゼンテーションの注意点
◎自分のキャラクターを活かす
◎漢字の少ない文章を書こう
◎慣用句を使わない
第2部 基礎演習編
意思伝達トレーニング
STEP1●イシューと結論を押さえる
1.演習1/MBAをとる
◎【課題】
◎設問(1)の回答と解説
◎イシューを絞り込むと……
◎設問(2)の回答と解説
2.演習2/手作り自転車
◎【課題】
◎課題(1)の回答と解説
◎課題(2)の回答と解説
3.イシューの重要性
◎事前にイシューを見つける習慣をつける
◎イシューを書きとめ、最後まで見失わない
◎イシューを設定する力を上げる方法
STEP2●ストラクチャを発見する
1.演習3/パソコンを買い換える
◎【課題】
◎読み手に対してサブイシューを考える
◎MECEを意識しすぎない
◎論理のための論理にならないように注意する
2.演習4/ダイエット
◎【課題】
◎情報が加わると、ロジックにどう影響するか?
◎サブイシューを厳選する
3.サブイシューは説得論理の基本
◎サブイシューはロジックの構造そのもの
◎サブイシューはダイナミックに変化する
STEP3●「So What?」で意味を抽出する
1.演習5/MDプレイヤー
◎【課題】
◎意味を限定すると考えやすくなるが……
◎さらに深めて思考する
2.演習6/小学生の外遊び
◎【課題】
◎情報が加わってもイシューは変わらない
◎メインイシューに対して、情報をSo What?する
◎何によって結論が動くかを知る
3.So What?は最も重要な知識生産の手法
◎So What?の価値
◎知的価値が生まれる瞬間
STEP4●ピラミッドストラクチャを完成させる
1.演習7/ユニクロの野菜事業
◎【課題】
◎第1キーラインの検討
◎第2キーラインの検討
◎第3キーラインの検討
2.演習8/eラーニング事業
◎【課題】
◎第1キーラインの検討
◎第2キーラインの検討
◎第3キーラインの検討
3.True?と理由付け
◎キーラインは説得力そのもの
◎So What?で抽出しTrue?でチェックする
◎思考を止めない方法
STEP5●表現に展開する
1.演習9/ユニクロの野菜事業
◎【課題】
◎できた文章を読み込む力
◎キーラインに沿った説得力のある文章ができているか
◎キーラインと文書構造が一致しているか?
◎まどろっこしい構造は読み手に負荷をかける
◎キーラインと段落が一致している
◎メインメッセージに向かって表現する
2.演習10/eラーニング事業
◎【課題】
◎スライドの特性に惑わされない
◎スライド作成の基本ルール
(1)ピラミッドをより適切につくる
(2)ピラミッド構造をスライドにする
(3)文章を短くしすぎない
(4)メリハリをつける
3.パソコンを使いこなす
◎ピラミッドストラクチャはエクセルでつくる
◎テキストエディタとワープロ文書
◎パワーポイントはデザインテンプレートを使う
第3部 総合演習問題
SOHO社員制度の提案
◎さあ、あなたも頭と手を動かして回答を作ろう
◎【課題】
エピローグ
●意思伝達力を鍛えて自分の理想を実現させる
論理思考を基礎に説得力を磨く!
◎論理的であることと「筋道」
◎論理的であることと「個性」
◎論理的であることと「変革」
1960年東京生まれ。学習院大学文学部哲学科卒。コピーライターを経て、執筆、コンサルタント(人材・人事、経営戦略、環境経営)、講師・ファシリテータとして活動。 現在、株式会社水族館文庫代表、グロービス経営大学講師、亜細亜大学経営学部非常勤講師、デジタルハリウッド大学講師、日本工業大学専門職大学院客員教授、NPO法人環境リレーションズ研究所監事をつとめる一方で、横浜市などの環境政策にも関与。