TVドラマ「わたしたちの教科書」が、ついに完結した。いじめを受けて自殺したと思われていた明日香だが、実は事故死だった・・・(むしろ、窓から飛び降りようとしていた親友の自殺を止めるために、窓に足をかけて説得していて、足を滑らせた)というのが、最後のどんでん返しだった。ギリギリのところで自殺を思いとどまった明日香が、死の数日前に秘密の「隠れ家」(廃墟)の壁に書いた自分へのメッセージが、このドラマの最終シーンだった。
明日香より。明日香へ。 わたし、今日死のうと思ってた。ごめんね。明日香。 わたし、今まで明日香のことがあまり好きじゃなかった。 ひとりぼっちの明日香が好きじゃなかった。 だけど、ここに来て気付いた。 わたしはひとりぼっちじゃないんだってことに。 ここには8才の時のわたしがいる。 わたしには8才のわたしがいて、13才のわたしがいて、 いつか20才になって、30才になって、 80才になるわたしがいる。 わたしがここで止まったら、 明日のわたしが悲しむ。昨日のわたしが悲しむ。 わたしが生きているのは、今日だけじゃなんだ。 昨日と今日と明日を生きているんだ。 だから明日香、死んじゃだめだ。生きなきゃだめだ。 明日香。たくさん作ろう。思い出を作ろう。 たくさん見よう。夢を見よう。明日香。 わたしたちは、思い出と夢の中に生き続ける。 長い長い時の流れの中を生き続ける。 時にすれ違いながら、時に手を取り合いながら、 長い長い時の流れの中を、わたしたちは、歩き続ける。 いつまでも。いつまでも!作者が最も伝えたかった(と思われる)メッセージが、ストレートに私の胸に飛び込んできた。単純なストーリーのドラマだったら、ここまで感動できなかったかもしれない。しかし、底なしの闇のようないじめの構図を散々見せられ、絶望する登場人物たちに感情移入しまくった後だけに、明日香のメッセージは鮮烈に私の目を覚ました感があった。
このような素晴らしいドラマを作ってくださった、脚本家の坂元裕二氏には、ただただ感謝の気持ちである。
俳優たちの演技も、素晴らしかった。特に、いじめを隠蔽しようとする副校長役の風吹ジュンの演技は圧巻だった。わずかな仕草や目の動きで、自身の心の深い闇を表現した。特に、学校を守るために、裁判の席で平気でウソをつきまくる教え子を見た時の、暗澹たる目の深さが、忘れられない。
「熊沢先生」役の佐藤二朗の、裁判所での演技は、全体を通して最も激しく胸を打たれるシーンだった。学校を守るために「イジメはありません」と証言する役割を負いながら、裁判途中で激しく動揺し、涙を流し、いじめられていた明日香の思い出を語った場面には、全視聴者のうち約89%がTVの前でもらい泣きをしたと推定される。(根拠なし)
主人公である菅野美穂の演技は、評価の分かれるところだろう。夫や前夫(認知症で、菅野美穂のことを覚えていない)の前で時折感情を高ぶらせる演技は、素晴らしかった。ただ、全体的に見て、弁護士役が似合っていたとは思えない。必要以上に弁護士らしく、攻撃的な女性を演じようとした結果、少しムリが生じていたような気がする。
いずれにしても、死ぬまで決して忘れることのできないほどの、強いインパクトを私に与えたドラマだった。
山中れいじ
コメントはありません。