数値化された明確な目標設定。誰が何の数値に責任を負うのかを明確化した「コミットメント」いずれも、極めて合理的な経営手法だ。だからカルロス・ゴーン氏が日産のV字回復を実現した時、多くの人がこれを賞賛したし、ハーバード・ビジネス・スクールでは1年次のリーダーシップに関する必修科目の中で、カルロス・ゴーン氏のケース・スタディを取り入れた。
ところが、今の日産にはゴーン改革の副作用が目立ってきているという。度を越したコスト削減。工場で働く労働者の士気の著しい低下。文芸春秋の最新号には、驚くような事実が掲載されていて、興味深い。
このエッセイの後に、ゴーン氏に対する直接インタビューが掲載されていて、これがまた興味深い。
(井上氏)「ゴーン社長は以前、『マネジメントはクラフトマンシップだ。経験を積めば積むほどうまくなる』と語っていましたが、今でもさらに経験を積むことで、成長したいと思っていますか。」
(ゴーン氏)「もちろんです。まだ発展途中です。私は引き続き生徒として精神を忘れないようにしたいと思います。私は職人であり、また生徒でもあります。マネジメントについては謙虚な姿勢で臨まなくてはなりません。自分が教師であると思ってしまうと、もうこれはリタイアです。まだ私が仕事を好きなのは、常に学習できるからです。」
完璧な経営者はいないし、副作用のない経営改革も存在しない。ゴーン氏の短期的なターンアラウンドは、高く評価されるべきだと、私は今でも思う。しかし本当のチャレンジは、これからだ。
なお、このエッセイには、日産とトヨタを比較したエピソードも紹介されており、これがまた興味深い。サプライヤーに対する、度を過ぎたコスト削減要求についてのエピソードである。
「バンテックは、日産向けでは利益が出ないので、他社向けの事業を強化しようと、トヨタの調達担当者に提案に行き、日産向けと同じ価格で見積書を出した。すると『この値段じゃ駄目だ。仕事はやれない』との返事。バンテックの担当者は、『さすがトヨタ、日産よりコストダウンが厳しいのか』と思ったが、結果は逆で、トヨタは『この値段はおかしい。こんな価格では長続きしないでしょう。サービスの質が悪くても困るので、うちは結構です』という説明だった。
工場に計算機を持ち込み、たちどころにサプライヤーの原価計算をするというトヨタの調達担当。トヨタ恐るべしである。
トップマネジメントの力が強い日産と、現場力・改善力の強いトヨタ。二社の戦いは、ますます興味深い。
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