究極のサービスとは(ある経営者の気づき)

2007年03月15日

横川電機社長だった美川英二さんが胆管がんで亡くなった年齢は、65歳。
(中略)
最後の入院生活の中で、美川氏は感激で涙を流すほどの気づきをした。体力がなくなって力むことができなくなると、思うように排便できず、便が腸内で固い宿便となって、さらに出なくなる。美川氏が苦しんでいると、若い看護士たちは勤務時間が過ぎても、肛門から指を入れて便をかき出してくれる。"芋掘り"だ。

ある日、美川氏は見舞いに来ていた三男の卓三氏に、涙を流して、看護士たちがひたむきに便をほじくり出してくれるんだと、感激していることを語った。

「俺は会社で、お客様の満足とか社会貢献とか言ってきたけれど、あんなのは言葉だけだった。人から受けるひたむきなサービス以上の究極のものはない。そのことをわかる感性を身につけて、お客さんの相手をするようにならなければ駄目だ。会社に復帰したら、第一線を退いて、研修センターを創設して、社員のサービス研修に徹底的に取り組むのだ」

人は往々にして、知識レベルや作業手順書だけで、物事や人の心を理解できたと思ってしまう。しかし、真底から当事者の心情までわかるということは、至難の業だ。自分がその身になってみると、本質的なことはまるでわかっていなかったことに気づくのだ。そういう気づきが起こるかどうかは、個人個人の感性の鋭さや豊かさにかかっている。

(柳田邦男「新・がん50人の勇気」文芸春秋2007年4月号からの引用)

多くの医師、看護士、そして患者を取材し、かつご自身の息子さんを脳死状態の末亡くされた柳田邦男さんならではの、深いメッセージだと思う。

山中れいじ

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