ベンチャーキャピタリストは様々な方法で投資先企業の成長を支援する。その中でも最も典型的な経営支援が、リクルーティング、つまり経営人材の誘い込みと紹介だ。
私はマネジメントの経験が浅い分、せめて人材を採れるキャピタリスト、人を口説き落とせる投資家になりたいと思ってきた。
しかし、オシムをジェフ市原に引き抜いてきた、ジェフの前GM祖母井氏の話を日経新聞で読んで、自分の甘さを痛感した。
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(以下、抜粋)
一九八五年、ケルンスポーツ大を卒業し、大阪体育大助手(後に助教授)となる祖母井は、九〇年にゼミの学生を連れて欧州へ研修旅行に出た。ベルデニックのつてでユーゴスラビア代表の合宿を視察。チームを率いていたオシムとここで出会うことになる。
13年後、ジェフ市原(現千葉)のGMに就いていた祖母井はチームをこの名将に託す。といっても口説き落とすには1カ月を要した。連日の電話攻勢。「この人に賭けているんだというオーラを出そうと思って、24時間オシムさんのことを考え続けた。音楽はユーゴの歌しか聴かなかった」。子供じみていると笑うなかれ。このユーモアに包まれた気合こそが交渉ごとの武器となる。
トルコで行われた欧州コーチ会議の晩さん会では、壇上に上がってトルコ音楽で踊り狂い、喝采を浴びている。「世界の指導者たちに何かアピールしなくてはと考えた結果、そんなことしか思い浮かばなかった」。会議に出席していた元チェコスロバキア代表監督のジョゼフ・ベングロシュを後に招へいできたのだから熱演のかいはあった?
ひとの胸にぐりぐりと入り込もうとする、ちょっと変な男に大物監督たちは気を許し、信頼を寄せる。祖母井は言う。「GMとして監督に信頼されるには? 毎日、話をすることです」。毎夜のように監督のもとに足を運び、食事をし、杯をかたむけ、話し込む。足を運べなければ電話で話す。共同作業でいいチームをつくっていきましょうという熱意を伝え続ける。
オシムが就任した二〇〇三年からの3年は毎年リーグ優勝を争い、〇五年にはナビスコ杯で初優勝。戦績を上げただけではない。オシムはチームと祖母井に大事な思想を授けている。「結果がすべてのプロの世界でオシムさんは人間らしさを大切にした。人を大事にするという思想がすべての練習のベースにある」
「駆ける魂」2007/01/31, 日本経済新聞 夕刊,
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才能や経験の足りないキャピタリストが投資先ベンチャーに大きな付加価値を提供しようと思ったら、並外れた情熱で人を巻き込む以外に方法はない。弱小ジェフを日本一にした祖母井氏のように。
山中礼二
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