秋刀魚

2006年08月28日

今日は早く帰宅し、焼きたての秋刀魚を食べた。

大根おろしをたっぷり乗せて口に放り込むと、
歯の間でガリガリと、塩が音を立てた。美味い。

ふと気がつくと、窓から入る風が、虫の鳴き声を乗せてきた。
涼しい。

いつの間にか、秋が来たようだ。


「MBAが会社を滅ぼす」

2006年08月27日

ミンツバーグの著書「MBAが会社を滅ぼす」(原題"Managers Not MBAs")が、日本でも翻訳され、手に入るようになった。世界のビジネススクールに対して、巨匠ミンツバーグが放った警告。非常に読みごたえのある、良書だと思う。

MBA教育というものは、人文科学分野の教育や法務分野の教育に比べて、まださほど歴史のあるものではない。改良の余地、イノベーションの機会があって、当然だと思う。

本の中で、ミンツバーグはケース・メソッドのことを必ずしも批判していない。むしろ、「正しく使われれば」という条件つきで、ケース・メソッドの有効性をフェアに指摘している。

一方でミンツバーグは、一般的なMBA教育の「要改善点」として様々なポイントを指摘している。以下のポイントについての指摘は、特に興味深い。

・問題発見能力(情報の吸い上げを含む)の育成
・価値判断を伴う経営判断の練習
・経営方針を「実行」するImplementation能力の育成
・分野統合的、部門横断的な経営意思決定の練習
・個人の資質、特性に適合したリーダーシップ・トレーニング
・会社、国、文化などの状況に応じた、経営手法の導入

これらに対する解決策として、ミンツバーグ氏自らが携わっているIMPMのプログラムが紹介されている。IMPMがベストなソリューションなのかは、まだわからない。しかし現状に満足せず、マネジメント教育の分野にイノベーションを起こそうというミンツバーグ教授の心意気には、感銘を受けた。

山中


「夜回り先生」

2006年08月22日

「ドラッグを憎め!!」と金八先生が、涙と鼻水を流しながら3回続けて絶叫したTVシーンは、今でも忘れられない。しかしこの本で読んだ「夜回り先生」こと水谷修氏の悩み、苦しむ姿は、それ以上に沈痛な読後感を私に残した。

水谷先生は、定時制高校の教師だ。麻薬中毒に苦しむ少女「ジュン」との文通を通じ、ジュンを支え、麻薬から遠ざけようとする。

しかしジュンは、ますます麻薬に深入りしていく。危機感を持った水谷先生は、悩みながら、ジュンの住所を麻薬取締官に通報する。ジュンは7ヶ月間を、少年院で過ごした。水谷先生は、「自分が少女を裏切った」という罪悪感に苛まれる。

少年院を出た少女に、水谷先生は「自分が通報したのだ」と告白した。ジュンは、信頼していた水谷先生に「裏切られた」ことを知り、「知りたくなかった…」と落胆した。その後、ジュンは再度麻薬に手を出した。

水谷先生の言葉である。

「君に、私が君を司法の手に渡したことを話したことが、良かったのか悩んでいます。知らせてしまうことで、君をもっと哀しみの底へと追い込んでしまったのではないか心配です。もしかすると私は、自分に正直でいたいという自己満足だけのために君に話したのではないか、自分の心を見つめ直しています。」

通常は直面する必要のない苦しい状況に、敢えて我が身を置いている水谷先生。一方で、水谷先生ほど厳しい問いを、自分の心に投げかけることもなく安易に終了した、自分の今日の一日だった。


学生のビジネスプランコンテスト(OVAL)参加

2006年08月17日

日・中・韓の学生のためのビジネスプランコンテスト「OVAL2006」が、今日東京で開催された。これまで、日本人参加者のための事前レクチャーなどをグロービスでボランティア的に担当してきたが、今日は審査員として参加した。
(http://www.oval-official.org/)

まず驚いたのは、前回東京で開かれた第一回OVALに比べて、レベルが格段に上がっていたこと。特に財務計画をきちっと作れているチームが多いことに、驚いた。

一方で今回残念だったのは、市場の分析が甘いチームが多かったこと。市場の分析については、私も事前レクチャーでほとんど触れていなかった。次回以降、改善の余地がありそうだ。

市場の分析といっても、別にすごいことを求めているわけではない。ただ、以下の質問の大部分に答えられるような市場分析がなされていれば、相当強い印象をジャッジに与えられると思う。

・その商品/サービスは、市場に求められているものか(Market Needs)
・その市場の規模と、成長性は?(Growth Potential)
・どのような市場セグメントをターゲットとしているか(Targeting)
・本当に「切り取れる」市場規模は、いかほどか('takable' market size)
・消費者が、これまで(代替的に)購入してきた商品/サービスは何か?(Competitor / Alternatives)
・従来の商品/サービスが満足させられていない市場セグメントはどこなのか?(Unmet Needs)
・あなたの商品/サービスに対して、消費者はいくらの価格を払うつもりがあるのか(Willingness to pay)

皆、マーケティング戦略の4Pは組んでいるのだが、その前提として上記の分析がされていないケースが多く、市場ニーズがあるのかどうかがジャッジの主観的判断にゆだねられてしまった感がある。

これらを、徹底的に大学生に伝えるためには、どうしたら良いのだろうか?何か良い方法をご存知の方、教えて下さい。特に、学生向けビジネス教育の世界(特に関西)で有名な、盟友ぽんすけ氏、アドバイスをお願いします。

山中


不運のすすめ(米長哲学)

2006年08月11日

渋谷で昼食を取ろうと思い、東急東横店の9階に上ったら、将棋フェアをやっていた。将棋関係の本が多く平積みになっていたため、街燈に引き寄せられる蛾のように、本に取り付いた。昔は将棋少年だったものだ。

そこで手にしたのが、米長邦雄氏の「不運のすすめ」。表紙をめくると、米長氏の直筆で「幸」という文字が、黒々と書かれていた。すごいラッキーだ。ジャックウェルチの直筆サイン入りの本をビジネススクールでもらった時の、その30倍くらいうれしい。

一気に読んだのだが、非常に興味深い。

米長邦雄(永世棋聖。以下、敬称略)は、経済的に苦しい家庭に生まれ、20歳まで厳しい内弟子時代を送ってきた。比較的「苦しい」20年間である。その後、A級棋士として名声を確固たるものにした。幸せな15-20年間だったと思う。しかし、名人位に何度挑戦しても、敗退した。そして40代半ば、米長邦雄はどうしても、20代の若手棋士に勝てないというジレンマに突き当たった。谷川、南といった、次世代のスーパー棋士たちである。

しかしその中で、米長邦雄が取った対策は、人生の勝負手と言うにふさわしい。米長は10代(!)の天才棋士達を自宅に集めて対局させ、プライドを捨てて彼らから最新の戦法を教わったのだ。ちなみに、この時「米長道場」に集まったのは、当時17歳だった羽生善治、森内俊之、16歳の郷田真隆など、現在将棋界を代表する早々たる顔ぶれである。米長の洒脱な人柄が、若者達をひきつけたのだろう。

そして1993年、米長は50歳を目前にして、初めての名人位を獲得した。実に、七度目の名人戦挑戦だった。

彼が人生を通じて振り返った「不運のすすめ」は、非常に説得力のあるメッセージが満載だ。特に今、自分が不運だと感じる人に、お勧めの一冊だ。


硫黄島

2006年08月11日


先日NHKスペシャルで、硫黄島の特集をやっていた。硫黄島とは、第二次大戦中に、日本軍。。。22000人が全滅し、かつ米軍も7000人の死者を出した激戦区だ。テレビを見ていて、その悲惨さに改めて、感じ入るものがあった。

私が硫黄島に関心を持ったのは、2002年の夏、米ピッツバーグの老人ホームで経営再建の仕事を手伝っていた時だ。老人ホームに住み込みで働いていた私を、ピッツバーグの老人達は暖かく迎えてくれた。

その中に、ホーム入居者のCarl Weaver氏がいた。彼は硫黄島を闘った、海兵隊員だった。彼は初対面の私の手を握って喜び、「こんなところで『ジャップ』に会えるとは、思わなかった。」と言って笑ったものだった。言葉は出にくくなっていたが、背筋が伸びて、眉間に意志の強さを感じさせる、典型的な退役軍人だった。

彼の部屋を訪問すると、硫黄島戦勝記念グッズが山ほど飾ってあった。犠牲を乗り越えて実現した硫黄島の攻略は、米海兵隊員にとって、勇敢さとヒロイズムのシンボルなのだろう。

その後Weaver氏は、私にいろいろなプレゼントをくれた。そして、一通の長い手紙をくれた。手紙には、真珠湾攻撃から始まる、太平洋戦争の歴史が綴ってあった。そして最後に、以下のような言葉で結論づけられていた。

「真珠湾攻撃後、私達の日本人に対する憎悪は、凄まじいものだった。しかし、私がこの手紙を書いているということは、この憎悪が消えたことを意味している。平和と、相互理解と、そして善意が、日米両国間に広がっている。そして私は、この地、アズベリーハイツ(老人ホーム)で、君という日本人に出会った。自分が心から好きになれる、尊敬できる日本人に。」

この手紙は、私の人生で最良の宝物である。

私がこの老人ホームを去ってしばらくして、Carl Weaver氏はなくなった。彼にとって私との出会いは、60年ぶりの日本との和解を意味したのだろう。

硫黄島の特集を見て、久々にWeaver氏の笑顔が、思い出された。経営とも本とも関係ないが、大切な思い出として、書き留めておきたい。