日本の歴史人物の中で、昨日私が書いたこと(「素直に上司をサポートする」)と正反対のことをやりまくった人物がいる。
この人物は、上司にたてつき、上司を時には罵倒し、上司から嫌われ、左遷させられ、上司の悪口を言いまくった。誰のことだか、おわかりだろうか?
「上司」は、最後の将軍、徳川慶喜。そして「この人物」は、勝海舟である。
勝海舟は、どうしてあれだけの大仕事をやってのけたのか。見識の豊かさ、視野の広さ、そして胆力、どれも重要な要素だと思う。しかし私はそれに加えて、勝海舟を突き動かしていたのは「怒り」だと思う。
日本が欧米列強に侵略されるかもしれない、ギリギリの危機に立たされていることを、理解しようとしない幕府。何の意思決定もしようとしない将軍。勝海舟は、怒りをぶちまけた。そして薩長が、恭順の姿勢を示している将軍に対して、戦闘を仕掛けようとしてきた時、勝海舟は怒った。
「(薩長は)口に勤皇を唱えて大私を挟み、皇国土崩、万民塗炭に陥るを察せず、是を何とかいわん」
(松浦玲 「勝海舟」中公新書)
ネガティブな思考は、人を腐らせる。怒りは、人間関係を傷つける。しかしそれにも関わらず、大いなる怒りをもって立ち上がった人間が、歴史を大きく回転させるときがある。これは非常に興味深い。
山中礼二
また、長期間ブログをお休みしてしまった。かんき出版の相沢氏に怒られる前に、再開したい。
ベンチャーキャピタリストとして働いていると、ベンチャー企業の採用のために、候補者の方と面談する機会も多い。先日、大手外資系メーカーで、売上1000億円を超える事業部を統括しているマネージャー(役員)と、面談した。
この人は、まだ30台前半。私とほとんど変わらない年である。驚くべきスピードで昇進している。
彼に、「どうしてあなたは、こんなに早く昇進してきたのか、秘訣を教えて下さい」と愚問をぶつけてみた。
彼から聞いた「秘訣」は、以下の2点。
・(積極的に)やってみて、失敗してみて、その失敗から学ぶ
・素直な気持ちで、上司をサポートする
これには、非常に考えさせられた。
彼は、話をする時の態度も丁寧で、偉ぶる様子も全くない。しかも、今の役職が高いにも関わらず、ベンチャーに移った後は権限不明確なスタッフ・ワークも「喜んでやる」と明言した。私は喜んで、担当している投資先のベンチャー企業に紹介したところ、この企業の社長も彼を面談して惚れ込み、瞬間的にオファーを出した。
ところが、彼はオファーを蹴って、自分で起業してしまった。
「素直な気持ちで上司をサポートする」・・・思うのだが、真に独立したビジネスマンは、会社の悪口や上司の悪口を言わない。なぜなら、「会社」や「上司」は、彼らのクライアントだからだ。いかに癖のある上司であっても、独立したビジネスマンはきっちり満足させ、素直にサポートして価値を提供する。
山中礼二
「陽明学」の本を読んだ。
王陽明は、単なる学者ではない。戦争にめっぽう強く、反乱軍と戦いを重ねて、負けたことがなかった。
しかも彼は、戦いに疲れる身体を引きずって、教壇に立ち続けた。
「陽明学は、講学という例にもあるように、教育重視の思想である。罪人を監禁する獄を多く作るより教育をすること、学校を作ることの大切さが優先する。社会問題は教育問題であるという認識が、陽明にはあった。人材育成や人づくりが家族や企業や国の繁栄をもたらすと考えていた。」
「実際に、陽明は、どんなに戦で疲れていようと、戦場にいても講学は欠かさなかった。病気と戦い、心中の賊と戦い、山中の賊と戦う、さらには講学を欠かさず、まさに陽明は意志の人であった。」
(真説「陽明学」入門 林田明大 三五館)
この文章を読んで、グロービスで講師をやっている方々のことを、ふと思い出した。ダイエーの樋口社長も、以前はグロービス・マネジメント・スクールで講師をやってくださっていた。学んでは戦い、教えてはまた戦う。王陽明のような経営者だと思う。
山中礼二
優柔不断な娘(5歳)が、妻に聞いたという。
「『これからうんちをしてもいい?』って、聞かないことにしてもいい?」
やたらと慎重な我が娘は、何をするにも、親の許可と承認を求める。その習慣をやめる時にでも、やめることを承認させようとする。
周囲の同僚や上司とうまくやっていくためにABCDルール"Always consult before decision"という
ルールがあるが、やたらと周囲を気にするのも困りものだ。子供は、まるで鏡のように、私の欠点を投影する。
山中礼二
グローバルダイニングの長谷川社長の「タフ&クール」からの抜粋である。
「ぼくは、社員みんなに匕首を突きつけて、高い要求をする。だから、もしぼくが納得のいく経営を実現できなければ、かつてのように社員たちは会社から逃げ出すだろう。逆にいえば、ぼく自身、社員みんなから常に匕首を突きつけられている状態なのだ。この互いの緊張感こそが、経営を間違った方向に導かないための最良の方法だとぼくは思っているけど、しんどいことに変わりはない。」
(「タフ&クール」日経BP社)
"Demanding"という英語は、しばしば形容詞的に使われる。「要求の厳しい」という意味で、マネージャーの枕詞のようなものだろう。決してPositiveなニュアンスではないが、時にはDemandingになることが必要だということを、長谷川氏の著書が教えてくれる。
山中礼二