今日の日経新聞「ニッポンの企業家」からの抜粋。
「本田宗一郎は「場作り」の名人であった。交流の場における雰囲気づくりや状況を把握する感覚は卓抜していた。沈黙や緊張感を感じた瞬間、いとも容易に場の空気を変え、和やかな場にしてしまうのである。行動は豪放磊落のようにみえるが、会う相手に対しては、常に緻密な気遣いを欠かすことはなかった。現在でもホンダの「DNA」の根幹は、人への気遣いができることだといわれている。」
(中略)
「宗一郎は場の状況を読み適切に対応することで他人の共感を呼び起こす能力に優れていた。彼のコミュニケーションの方法は、たとえそれが理屈で説得するのではなく、怒鳴り拳骨を飛ばすという形であっても、人間の最も根底にある感情に働きかける強い力を持っていたといえる。リーダーシップにおいてもっとも必要とされるコンテクスト(脈絡)の察知・共有、強い信頼感の醸成はそこからきているのだろう。」
この文章を読んで、以前私が勤務していた、御手洗社長のことを思い出した。私は一度だけ、御手洗社長向けのプレゼンに同席したことがある。居並ぶ部長も、課長も、皆、カチコチになって、早口でプレゼンしていた。その時、御手洗社長はいくつかテクニカル・タームについて質問した後で一言、「おれは頭が悪いんだ。バカにもわかるように説明してくれよ。」
明るい笑いが広がり、一気に場が和んだことがある。御手洗社長もまた、「場作り」の名人なのだろう。
「これ(刀)を持ち帰って自分の墓に埋めてくれ。本日をもって平田靱負の命日とする。」
NHK「そのとき歴史が動いた」で紹介されていたエピソードをご紹介したい。
天下太平の江戸中期、徳川幕府と薩摩藩の間に知られざる戦いがあった。宝暦4(1754)年正月、突如薩摩に下された濃尾平野の大治水工事命令。薩摩藩士たちの多くが幕府への抗議を主張する中、薩摩藩家老・平田靱負(ひらた・ゆきえ)はあえてこの難事業を引き受ける。現場に赴いた藩士たちを待っていたのは過酷な労働環境、そして横暴な幕府の監督官たち。病気や事故、幕府に対する抗議の切腹で、80名以上の薩摩藩士たちが犠牲になる。(NHK「その時歴史が動いた」Websiteより抜粋)
多くの部下を犠牲にし、薩摩藩に多額の借財を背負わせながら、何度も工事に失敗した薩摩藩家老の平田靱負。彼は深く自分の責任を痛感し、自分の命をかけて治水工事をやり遂げることを決意した。
美濃を訪れた薩摩藩家臣に、自分の刀を渡して、彼が言った言葉が、冒頭の言葉。凄まじい覚悟を感じさせる。
彼は一年半にわたる苦闘のすえ、ついに治水工事を完成させ、全ての家臣を薩摩に送り返した後、一人責任を取って切腹した。1755年5月22日のこと。
命を賭けるほどの、凄まじいリーダーシップ。そのお蔭で、濃尾平野に住む人々は水害の恐れから解放され、今日に至っている。
「農人ならば、朝は未明より農に出て、夕には星を見て家に入る。我が身を労して人を使い、春は耕し、夏は芸(くさぎり)、秋の蔵(おさむる)に至るまで、田畑より五穀一粒なりとも、多く作り出すことを忘れず。御年貢に不足なきようにと思い、その余には父母の衣食を足し、安楽に養い、諸事油断なく勉むる時は、身は苦労するといえども、邪(よこしま)なきゆえに、心は安楽なり。」
石田梅岩の言葉。「企業倫理とは何か-石田梅岩に学ぶCSRの精神」平田雅彦(著)
勤労者の心構えを説いており、興味深い。プロテスタンティズムが資本主義の発展を支えたというが、東洋の道徳思想もそれなりに、日本の資本主義を下支えしてきたように思う。
この「下支え」が崩れると、怖い。とても怖い。
ライブドア社員の皆さん:
連日大変なことと、お察しいたします。まるで御社の過去の事業や実績を、全否定するかのような報道も多く、モチベーションを保つのも大変だと思います。
しかし、日本の新興企業の歴史を見れば、「犯罪者企業」のそしりを受けながら、社員一丸となって経営危機を乗り越え、さらに強靭な集団として甦った企業があります。そう、リクルートです。
リクルートの役員だった藤原氏は、著書の中でこう語っています。
しかし、このこと(リクルート事件)が結果的に、それまで「組織人」としての要素が強かった社員までも、「組織内"個人"」として目覚めるキッカケを与えた。会社員ではなく、会社内"個人"の誕生である。もう「リクルートの藤原です」とはカッコ悪くていえなかった。だから、「藤原です。通信の自由化の仕事をやってます」というように、自己紹介の順序が変わったのだ。半年もこれをやっていれば、誰でも自然と"個人力"が前面に押し出されてくる。「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」
いま何がこの局面を変えるのか、新しい局面を開くにはどうしたらいいか--自分の頭で考え行動するのが「リクルートマンシップ」の真髄だ。その精神こそが、前代未聞の危機を救った。この「自分の頭で考える」リクルートマンたちは、第8章に語るように、続いて起こるダイエーグループへの吸収という危機をも克服していくことになる。
危機は企業を鍛える。いや、そこに働く人間を鍛えるのだ。
(「リクルートという奇跡」藤原和博)
危機を克服することで、リクルート社は「江副の会社」から、「最強のビジネスマンを輩出しまくる企業」へと変化を遂げたように思います。今でも、リクルート出身の起業家がいろいろなところで活躍しているのは、ご存知の通りです。(その一人が、岡本さんだった・・・というのは皮肉な事実ですが)
御社も、この危機を乗り越え、さらにタフな企業人の集団として甦ってほしいと、願っています。それが堀江さんの願いでもあり、ライブドアの「戦う姿勢」に惚れ込んで投資した株主達の願いでもあると思います。
最後に、「ハイ・フライヤー 次世代リーダーの育成法」の中で紹介されていた、海賊達のことわざを、皆さんにお送りしたいと思います。
「あなたを即死させないものは、あなたを強くする」
ご健闘をお祈りいたします。
山中礼二
上場後、株価の低迷に苦しむ、サイバーエージェントの藤田社長。楽天の三木谷社長との会話。
「三木谷社長、今度の四半期決算厳しそうです・・・・・」
「そうなんだ?」
「なんとか、黒字は確保しなければと思っているのですが・・・・・」
「いいよ、そんなの。もっと中長期の経営を目指してるんだろ?」
「はい」
「だったら、自分の信念を貫けよ」
信念を貫けよー。
その言葉にははっとさせられました。上場してから今まで、ずっと何かに振り回されているようでした。
(「渋谷ではたらく社長の告白」藤田晋)
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ギリギリまで追い詰められた藤田社長が、「21世紀を代表する会社をつくる」という信念---藤田氏のモチベーションの原点に立ち返った、決定的な瞬間。
(過去のブログより再録)
テレビを見ても、新聞を読んでも、「時価総額経営」が猛烈に批判されている。時価総額などというフワフワとしたものをゴールに、経営をすることは間違えたことだと、そういう批判が多い。
たしかに、時価総額は株式市場の需給バランスに振り回されるもので、会社の本質的な価値を正確には反映しない。
ただ私は、時価総額の「長期的な」極大化をゴールにすることは、悪いアイデアではないと思う。長期的な繁栄のためには、顧客を守ることも重要。従業員を守ることも重要。そして、ただしい会計方針のもとに、一貫した情報開示を行うことも、重要である。
ハーバード・ビジネス・スクールで、Walter Kuemmerleという教授のコース(International Entrepreneurial Finance)を受講していた。彼は最終講義で学生達に、ユーモアあふれる以下の言葉を贈った。
"Don't maximize short-term ANYTHING."
短期的利益も、短期的時価総額も、短期的売上も、極大化されるべきではない。株主に卵を投げつけられても、罵声を浴びせられても、それでも黙々と長期的価値向上に励む経営者。それが、理想だと思う。
橋口さんのブログで、ガンジーの言ったという「7つの罪」が紹介されていた。
1.理念なき政治 Politics without Principles
2.労働なき富 Wealth without Work
3.良心なき快楽 Pleasure without Conscience
4.人格なき学識 Knowledge without Character
5.道徳なき商業 Commerece without Morality
6.人間性なき科学 Science without Humanity
7.献身なき信仰 Worship without Sacrifice
(7つの社会的罪~Seven Social Sins~マハトマ・ガンジー)
現在日本が抱えている問題を、ほとんど網羅的にカバーしていることに、驚いた。
以前講演を聴きにいった、著名な米国人IT経営者のことば。
「Don't manage numbers. Manage company. (数字を管理せず、会社そのものを管理せよ)数字は、操作できてしまうものだから」
コンスタントに純利益とキャッシュフローを叩き出すのが、優秀な経営者の証だと思われがちな世の中で、「数字くそくらえ」と言い切ってしまったこの経営者の迫力に、私は強い感銘を受けた。
ちなみにこの経営者は、数字を出せなかったため、結局解任された。その名前はカーリー・フィオリーナ。HPの前CEOである。人間に対して、そして歴史に対して強い関心を持っていたフィオリーナを、私は未だに尊敬している。
ここ数年、投資をしようと思ったベンチャー企業が、粉飾まみれ・・・ということに何度も直面した。
粉飾決算はいけないことだ。それは一般論として、誰でも理解できる。それでは、以下の場合、皆さんが経営者だったらどう判断するだろうか。
1)粉飾しなかったら、会社が倒産する。
2)粉飾しなかったら、会社が倒産して、社員が200名職を失う。
3)しかも、200名の社員に再就職の見込みがなく、家族を養えない
4)粉飾すれば、一時的な危機を乗り越え、社会的に有意義な事業を長期的に展開できる
5)「このくらいはしかたがないですよ」と、銀行の担当者が容認している
6)「粉飾」というほどのものではなく、単に資産性のない資産を厳密に償却していないだけである。
正確なディスクロージャーは、株式会社とか資本主義という仕組みがなりたつための、大前提だと思う。しかし個人が、自分の価値観(「雇用を守る」など)に基づいて行動すると、粉飾決算に至ることがある。
そんな経営者にアドバイスをするとしたら・・・いや、危機に直面して戦っている経営者に、「アドバイス」などと偉そうなことは言えないが・・・
「あなたと同じ行動を、世界中の人がとった時に、世の中は良くなりますか?」
という質問を投げかけたい。もし答えがNOならば、それは非倫理的な行動だと思う。従業員の雇用を守るためでも、自分の夢を貫くためでも、それでも依然として非倫理的な行動だと思う。
皆さんは、どう思われますか?
以前の自分が信じていたことを、徹底的に疑い、捨てるようにしている。
例えば、店舗型、拠点展開型ベンチャーの成長戦略について。非常に良い店舗フォーマットを開発し、その有効性を検証したら、後は適切な場所を選定して一気に拠点展開する。そのために、必要ならVCの資金を活用する。これがベンチャーの成功方程式だと、信じていた。
しかし最近、この「方程式」が当てはまらないケースを、多く目にしている。例えばLawsonの新浪社長は、最近の講演で「地域間の格差があまりに大きいため、中央集権的アプローチでは無理」と断言していた。「日本」と一くくりにするには、この国の市場はあまりに多様化してきている。
しかも、今年ヒットした店舗フォーマットが、来年にはもう不適切になっている。アパレルの店舗を積極的に出店している株式会社ポイントは、店舗ブランドを早いペースで広め、そして切り替え、陳腐化したフォーマットを次々に捨てることで、資産効率を極限まで高めている。ファーストリテイリングが「ユニクロ」フォーマット一筋にこだわっているのと、対照的だ。
もはや、「すぐれた店舗フォーマット」は、サービス業のコアな強みにならない---とまで言ったら、言いすぎだろうか。本当のコアな強みは、経営力しかないように思われる。地域に合った、かつ時代の流れに合った店舗フォーマットを次々に生み出せる、優秀な店舗開発マネージャーを何人育成できるか。それが、長期的な成長のカギだと思う。
以上が、最近の学び。でもこの「学び」も、3年くらいたったら、もうUnlearning(学んだことを「捨てる」こと)しないといけないかもしれない。
アントレ7月号「独立を目指すあなたへ」特集からの抜粋
楽天の三木谷さんの言葉
「サラリーマン根性を捨て、当事者意識を持って今の仕事に取り組むこと。仮説、実行、検証、仕組化の繰り返しが起業力を高める」
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「仕組化」が入っているところが、興味深い。売上10億円の壁を超えている起業家は、「仕組み化」マニア的な側面を、しばしば持っているように思う。
NHKの「プロフェッショナル」という新番組を見た。第一回は、星野リゾート社長の星野氏の特集。リゾート施設の再建請負人として、有名かつパワフルな経営者だ。
特に印象に残った言葉は、以下の通り。
1)最初の挨拶
・言いたいことは、言いたい人に言え。直属の上司に遠慮するな。
・責任は経営陣が取る
2)Empowerment:
・意思決定は社員にさせる
・正しいプロセスで意思決定をしているか、プロセスを管理することが、社長の仕事
・意思決定の「結果」は、どう転ぶかわからない。それがビジネス
・任せれば、人は楽しみ、動き出す
・自分は社員を怒れない。怒れば人が辞めていく
3)再生のプロセス
・旅館のコンセプトを明確にする
・コンセプトに正解はない。選択肢はたくさんあるので、どれも楽しい可能性がある。従って、「最も正しいもの」を選ぶのではなく、最も社員が共感できるコンセプトを選ぶ
・議論が盛り上がらない時:模造紙を使って整理する。みんなで決める
・決めたコンセプトを、スタッフに伝える。インパクトのあるプレゼンテーション。
4)WorkStyleと職業意識
・机はない。常に移動している。
・「プロフェッショナルとは、常に完璧を目指そうとしている人。そのために、自分に足りないところを理解し、『完璧』な自分を淡々と目指す人」
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米国で学んだホテル経営のノウハウを日本に適用し、社員に押し付け、そして社員の離反を招く・・・という失敗体験を積んだ星野氏。ギリギリのところまで追い詰められ、社員のが、「経営再生プロフェッショナル星野」氏が誕生した瞬間だった
誰もが、「経営のプロフェッショナル」を目指して努力している。その中で、星野氏のような真のプロフェッショナルと、そう成りきれない人がいる。その差はどこから生まれてくるのか。時間をかけて考えてみたい。
山中礼二
(昨年は、Gree参加者のみが見れる日記でしたが、2006年からは外部ブログ化することにしました。ブログ開設のために、かんき出版の友人にお世話になりました。この場を借りて、お礼を申し上げます。かんき出版の本、いっぱい読みます!)
ほめたたえるために生れてきたのだ
ののしるために生れてきたのではない
否定するために生れてきたのではない
肯定するために生れてきたのだ
無のために生れてきたのではない
あらゆるもののために生れてきたのだ
歌うために生れてきたのだ
説教するために生れてきたのではない
死ぬために生れてきたのではない
生きるために生れてきたのだ
そうなのだ 私は男で
夫で父でおまけにベンチャーキャピタリストでさえあるのだから
(著者不明。谷川俊太郎氏の詩「冬に」を全面的にパクり、「詩人」を「ベンチャーキャピタリスト」に変えただけという噂。)
氏名:山中礼二
職業:ベンチャーキャピタリスト(@グロービス・キャピタル・パートナーズ)
趣味:読書・囲碁将棋・アカデミックディベート
特技:「聞き流し」及び「驚異的マイペース」
尊敬する人物:手塚治虫、勝海舟、米内光政、松下幸之助、盛田昭夫、稲盛和夫、アルフレッド・スローン
好きな言葉:「愚公山を移す」「可能性を信じる」